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「頭髪を乾かすためにお使いください」という注意書き

 何気ない文面にも、その背景を汲み取って、あれこれ考えてしまうときがある。特に注意書きの威力は凄い。様々な思いを感じる。以前沖縄の安いドミトリーに泊まったとき、エレベーター内に英語で「ジャンプするな!」と書かれていて笑ったのを今でも思い出す。誰かジャンプしすぎた人がいたのだろうな。その人とお酒でも飲んでみたくなった。

 近所のフィットネスクラブでバレーボールをするのが趣味で、週に二回ほどお世話になっている。フィットネスクラブの更衣室は、注意書きの宝庫だ。先日、特に気になるものを見つけた。ドライヤーが設置されている場所にあった「頭髪を乾かすためにお使いください」という注意書きだ。

 ジャンプの例と同じ思考が働く。このフィットネスクラブでは、頭髪以外を乾かす人がいたのだろう。わざわざ明記するという行為が、そういう過去を浮かび上がらせる。それだけではない。それが「迷惑」だとはっきり示しているのだ。もしかしたら、クレームがあったのかもしれない。「アイツ頭髪以外乾かしているぞ!」と。これは結構面白い。

 まず考えられるのが、場所の問題だ。しかしこのフィットネスクラブ、会員数の割にドライヤーが多くて、都合10個は設置されている。すべてが埋まっているのを見たことがない。頭髪以外を乾かしていてドライヤーが使えない人が出てきたのなら話は分かるが。どうやらそうでもなさそうだ。

 ということは、頭髪以外――つまりワキ毛や下の毛など――を乾かしている行為「自体」が迷惑なのだろうか。確かに見ていて気持ちの良いものではない。しかし、クレームを入れるほどだろうか。フィットネスクラブ側が注意書きにするほどのことだろうか。うーん。

 三週間くらい考えていた。ブログにでも書こうかな、と思っていたところ、偶然見つけてしまった。ついさっき。いやはや、さすが伊集院光である。『深夜の馬鹿力』でこのことについて考察していたのだ。伊集院曰く、海パンを乾かす輩を防止しているのではないか、と。そうか、それには気づかなかった。感心した次第である。

 その放送では、最終的に「肛門を乾かす老人を見つけて、そういうことかと合点した」というオチがついていた。何とも世の中には、自分の思いつかないドライヤーの使い方を思いつく人がいるものだなあ。フィットネスクラブの注意書きだけでこれだけ楽しめるのだから、世界に飽きることはないのだろう。少し明るくなった金曜日だった。